会社分割で注意すべき税務届出(期中損金経理額等の損金算入に関する届出)

A社(3月決算法人)が保有する建物を、B社(A社の100%子会社)にx1年10月1日を分割効力発生日として適格分割した場合を例に解説します。

適格分割があった場合の減価償却資産の引継処理

適格分割により資産を移転した場合には、分割法人では帳簿価額により分割承継法人に引継(譲渡)することになり、譲渡損益は発生しません。分割承継法人も分割法人の帳簿価額で引継(取得)することになります。
資産が減価償却資産の場合には、いつの時点の帳簿価額で移転するかが問題になりますが、『適格分割等による期中損金経理額等の損金算入に関する届出』を提出した場合には、分割があった日の前日を事業年度末日として計算した減価償却費を控除後の帳簿価額で移転することになります。届出を提出していない場合には、分割があった日の属する事業年度の期首帳簿価額により移転することになります。

『適格分割等による期中損金経理額等の損金算入に関する届出』の提出

A社はx1年10月1日に建物をB社に分割しています。A社で期首~x1年9月30日までの建物の減価償却費を、A社の分割があった日の属する事業年度(X1年4月1日~x2年3月31日)で損金として計上するためには、『適格分割等による期中損金経理額等の損金算入に関する届出』を、適格分割の日以後2月以内に分割法人の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

届出の提出を失念した場合

『適格分割等による期中損金経理額等の損金算入に関する届出』の提出を失念した場合、A社では分割した建物に係る期首~x1年9月30日までの減価償却費を損金として計上することができません。会計上減価償却費を計上した場合には、償却超過額としてB社に移転することになります。

まとめ

A社で期首~x1年9月30日(半年分)の建物の減価償却費を損金とて計上したい場合には『適格分割等による期中損金経理額等の損金算入に関する届出』を提出する必要があります。A社の期首(X1年4月1日)時点の帳簿価額でB社に建物を移転したい場合には届出の提出は不要です。半年分の建物の減価償却費をA社とB社のいずれで計上するか検討して届出の提出要否を決める必要があります。

本記事は執筆時点の日本の税法等を考慮しておりますが、一定の前提に基づく一般的な解釈について述べたものであり、特定の法人や個人に対する専門的なアドバイスまたはサービスを提供するものではありません。ご不明な点は必ず税理士などの専門家に個別にご相談の上、ご判断下さい。本記事に依拠することにより利用者が被る損失については一切の責任を負わないものとします。

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